6月の読書記録・映画記録

読書記録

・浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち 石井光太
・不安な童話 恩田陸
・箇条書き手帳でうまくいく Marie

映画記録

なし……。。


 最早映画をやる必要があるのか……??
 観たい気持ちはあるけれどなかなか2時間など長い時間をかけてよし観ましょうという気持ちにならなくて、ううん。でも観なかったことも記録といえば記録とすればそう。今上映している作品としては万引き家族が気になるし観たいのだけれど、いつ観に行こう……つい創作の方を優先させてしまう。
 同じく創作優先のせいか仕事でへとへとになっている日々なせいか、読書も結局殆どできなかったのがもどかしい。積み本を完全消化するのが目標だったんですが、結局叶わず。
 あれだけ積み本積み本と言っておきながらなんですが、なかなかがっつりと読めなかった6月、改めて考えて、積み本のことは一度置いておくことにしました。今読みたい本を優先させることにして、その合間に気分が乗ったら積み本を進める、と。ままならず焦ったり疲弊したりする日々の中で、溜まっているものを消していく感覚は心地よいものではあるのだけれど、読まなきゃ読まなきゃという意識が先行して少々しんどさもあって、その自分の感情に気付いた時に無理に積み本消化をする必要は無いなと。そういうわけで久しぶりに新しく本を買ったりした6月でした。7月はどうなるかなー。
 6月の本については、でもどれも面白かったです。恩田陸は安パイ。
「浮浪児」は戦後日本、戦争で親を失ったり家出をして路上で暮らすようになったこどもたちに焦点をあて、その時代をそうして生きた人たちに取材を重ねて作り上げた濃密なノンフィクション。作者である石井光太は国内外の貧困・難民の情勢についても多くの書き上げているジャーナリストなのだけれど、自作まっしろな闇の参考資料という意図と単純に私がそのあたりの分野に興味があるという理由で今までも著作を何冊か読んだことがあり、今回のこの一冊もその気持ちで手に取ったもの。
 この石井光太の良さというのは、こういった貧困等々重いテーマについて、単純に重く描くのではなく、どことなく希望を漂わせているだと思っている。勿論、赤裸々に苦しみを描くけれど、その苦しみの中で生きている人々について描く文章は、まさに生そのものといいますか、血が通い肉があり、感情があり、その場所で生活をしている、その姿を丁寧に書く。絶対的な悲劇として書くのではない。淡々と事実を述べながら、その場や時代の空気を伝える。
 時代というのは過去の積み重ねで、今はその一番先に立っている。
 私たちは溢れかえるような豊かさの中にいて、それは戦後の絶対的に物資が足りなかった頃と比較すれば天と地ほどの差があるはずで、それなのに生きづらい時代だなと思う。それは単純に比較するべきものではない。

「今の世の中はあまりに物に恵まれ過ぎていて、生きることの意味や尊さが見えづらくなっている。だからこそ、大勢の人々が霧の中を迷走するように生きる目的を見失ってしまっている。」
「一つ忘れてはならないのは、豊かになった日本にも、形こそ違えど困難が数え切れないぐらいあるということだ。家庭にも、社会にも、世界にも高い壁が無数に立ちはだかっていて、私たちは生きている限り、それらを乗り越えていかなければならないが、場合によっては絶望や挫折を感じることもあるだろう。
 私は思う。そんなと時にこそ、浮浪児たちの力強さを思い起こしてみるのも一つではなないか、と。」

 作者の言葉を抜粋。
 この本で描かれている浮浪児たちの生活は困難を極め、時に犯罪に手を染め善悪の判断もつけなくなりながら、共通して「がむしゃらに生きている」のだった。その行く末は人による。しかしどの人も、あの時代について他人に話すことはしない、と言う。あの時代は、あの時代を経験した人にしか理解ができない、と。
 そうした時代について、人づてにこうして本を通じて読むことができたのは、もしかしたら貴重な経験であるような気がしてならない。
 重いテーマである分、読むのには時間を要した。けれど夢中になって読み進めた。特に終盤、希望が見えてきたあたりから。
 人間は力強い。
 きっとそれは私たちが考えている以上にそう。

「子供は家族から愛されたり、周りの人にめぐまれたりすることによって初めてしっかりとした自我が生まれるものだ。人を愛し、自分を制御し、生きると言うことに向かって歩んでいける。」

 この言葉が印象的なのだけれど、その前にもう一つ印象的な部分として、
 作中の元浮浪児の一人が、戦後の時と今とを比べて日本は何を失ったと思うかという質問を作者から投げかけられ、
「日本がうしなったものは、たくさんあるね。ありすぎて答えられない」
 と、しばらくしてから答えた。あえて一つあげるとすれば、と更に質問を重ねられ、しばし口を閉じてから、
「そうだな……人間らしさ、かな……人がちゃんと人とつながっているということだよ」
 と述べた。
 締め付けられるような気持ちになる。
 私たちは今、形の違う困難の渦中にあって、(個人的には)大きな希望を持てぬまま日々を淡々と生きている。
 そんな中で前を向いていくには、がむしゃらに生きるというのは一体どういうことなのか、消えゆく過去をないがしろにしてはいないだろうか、まだ自分が生きていない時代について見つめたときに、この生きづらさについてヒントをもらえるような気がした。
 勿論、自作を作っていくうえでのヒントにもなったと思うし、この人の本はもっと読みたいと改めて思った一冊でした。
 石井光太の熱心で綿密な取材、資料収集、それらを描ききる筆力。熱意の塊だと思う。生死の狭間を藻掻く壮絶な時代にあり、普通なら口を閉ざしていただろう人々がこの人に話をしたのは、真摯な姿勢にも理由があったのだろう。脱帽。埋もれた歴史に光をあててここまで濃厚に仕上げるとは。すごい本だった。テーマがテーマなだけに読んでいて辛くもなりますが、先に述べたように希望の漂う一冊でもあります。興味があればどうぞ。

 手帳本に関してはこの本を読んで界隈では流行りのバレットジャーナル実践しており、今のところ続いているのだけれどこのまま軌道に乗れたらどこかで記事にするかもしれない。