1107「僕の孤独が魚だとしたら――。100冊目を読んだ話」

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 うっかり100冊目で写真を撮るのを忘れていて、101冊目も既に入っている状態ですが、残りおよそ2ヶ月を残しながら目標である100冊読書を達成することができました。やったー!
 世間の読書家は100冊どころか200だの400だの1年で読んでいる方もおられるので比較してしまえば騒ぎ立てるような数字ではないのですが、読書が随分疎かになっていた昨今の私としては、本当によく読めています。月によってかなりの差がありますが、日付を確認するとちょうど半年で50冊の線を踏んでいるので一年という目で見るとそこまでアンバランスではなさそうに見えるマジック。
 見ているといろーんなことを思い出します。本の内容に限らず、その時生活がどんな状態だったのか、とかも。記録は良いもの楽しいもの。
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 100冊目は伊坂幸太郎のフィッシュストーリーを数年ぶりに再読しました。
 4つの短編が入っていますが、表題作がとりわけ大好きで、そんなに伊坂読んでなかったので、人気キャラ・黒澤と言われてもピンとこなかった当時。何故か新刊の帯がそのまま残っていて、どうしてもところどころ傷はあるが、保存状態は割と良い。平成21年なので約9年前か、と思うと昔のような思ったより最近のような、不思議な気持ちになります。読み返しても4編とも好きですが、やはりフィッシュストーリーの、展開の繋がり、伏線回収、救われる・報われる疾走感はなんともわくわくとした感情を味わわせてくれます。
 僕の孤独が魚だとしたら、そのあまりの巨大さと獰猛さに、鯨でさえ逃げ出すに違いない。
 僕の勇気が魚だとしたら、そのあまりの巨大さと若さで、陽光の跳ね返った川面をさらに輝かせるだろう。
 僕の挫折が魚だとしたら、そのあまりの悲痛さと滑稽さに、川にも海にも棲み処がなくなるだろう。
 孤独も、勇気も、挫折もすべて凝縮されている。様々な形で表現されている。もしも、もしもが全て繋がっていく爽快感。現実ではそんなのありえない、と一笑に付すこともできるかもしれないが、仮想だからこそできるまさに「物語の醍醐味が炸裂する」話だなあと強く強く思う。ヒーロー、世界、ロック、くすっと笑えるユーモアなエッセンス、嫌いになりきれない悪者、などなど、伊坂らしさが詰まってる。好き。きちんと言葉にできない。やはり好き。スタンダードというか、アクが薄いというか、誰に対してもオススメできます。
 細かくちりばめられていく伏線要素を鮮やかに回収していく、楽しい読書体験をさせてくれる作品に改めて感謝。
 新刊も読みたいなあ。未読の既刊もたくさんあるので読みたいなあ。
 そういうわけで読書欲の高揚はそのままに、まだ2ヶ月あるので、仮に1ヶ月10冊読むとしてもまだ20冊も一年のうちに読める!というわけでこれからもどんどん読んでいきますよ。

 ちなみに101冊目の流浪の月は海のベストセレクション2019にノミネートされそうな勢いでグッドだったので前情報をあまりいれずに読んでみてもらいたい所存。友達でも恋人でも家族でもない、その関係性には名前をつけられない、ただ傍にいたい。いびつに孤独に生きる男女のおはなし。読んでいたらぐんぐん物語の毒が身体に回っていって……没入。こういう話を書きたいと思っている部分があるので、創作脳も刺激を受けましたわ切ない話が好きな方におすすめ。凪良ゆうは先日ブログで紹介した美しい彼というBLノベルの作者なのですが、こちらは一般書籍となっております。今回これを読んでそもそも凪良ゆうが好きなのかもしれないなとやや確信じみたものを感じたのでこちらも作家読みしていきたいです。
 ところで100冊という目標を予想より早々に達成してしまったので年末に向けて何かもう一つ目標というかこれをできたらいいなというものを立てたいなと思い考えていたのですが、ちょうどkindleに、いつだったかダウンロードしたものの読めていなかった「宮沢賢治全集」という青空文庫の283作品(旧仮名や別文庫で物語自体は重複していたり最後には水彩作品が掲載されていたりしますが)をまとめたものがあるので、今書いている読書リストとは別枠で、年末までにこれを読破できたらいいなーと思って主にお風呂に浸かりながら読み進めています。これこそ作家読みそのものだ……何を読んだのかわからなくなるので手帳に全てのタイトルを書き写したんですが、8ページに渡っています。強烈。かなり短い詩から銀河鉄道の夜のようにそこそこ長いものもあるので楽しみながら読み進めていきたい。宮沢賢治の青く煌めく文章を堪能して、そして全部読み終えたら来年はどこかでまた岩手に行きたいです。
 そしてもう間もなく十二国記の続きが来るぞ!頑張って仕事をさっさと終わらせて飲み会の前に本屋に寄って買うんだぼくは!オオ!
 読書の秋はまだまだ続く。

 ところで多分もう少ししたらまっしろな闇を更新できるような気がしています。むんむん。そちらもどうぞよろしく、です。
 ここまで読んでくださりありがとうございました。